その噴水は、目下に広がる水路を目掛け、
吐き出すように水を噴き上げる。
吐き出された水は、坂を下り、
再び噴水の下へと送り返される。
そして、噴水は再び水を吐き出す。
同じ時間に、同じ電車で、同じ場所へ。
同じ時間に、同じ顔、同じ声、同じ人。
同じ時間に、空腹と呼ばれる症状を緩和させ、
同じ時間に、同じ電車で、同じ場所へ。
同じ時間に、空腹と呼ばれる症状を緩和させ、
同じ時間に、睡眠欲と呼ばれる症状を緩和させる。
そしてまた、
同じ時間に、同じ電車で、同じ場所へ。
毎日、同じ。
同じ僕。
僕は噴水から吐き出される水のように、
坂を下り、再び噴水の下へ帰る。
噴水から吐き出され、再び坂を下る。
強い風が吹いた。
噴水から吐き出された水の幾らかが、
突風に煽られ、坂を下ることなく、霧散した。
土に飲まれず、風に飲まれず、
噴水の中を泳ぎ続ける。
恐れるべきは、ニルヴァーナ。
少なくとも、僕にとっては。